夏に一番多く飲まれるお茶といえば、緑茶でもなく烏龍茶でもなく「麦茶」です。
というのも、麦茶の原材料である大麦の収穫時期は初夏。夏は一番新鮮な麦茶の茶葉が市場に出回るため、いつからか「夏は麦茶が旬」というイメージが定着して、世間でもよく飲まれるようになっています。
今回はそんな麦茶の歴史を紐解きながら、麦茶の持つ健康効果や効能をご紹介します。
昔の日本人は身体を冷やすために麦茶を飲んでいた
麦茶は原材料として使われている大麦に、体内に吸収されると体温を下げて身体を冷やす働きがあり、厳しい暑さを乗り切るための飲み物として古くから日本人に重宝されてきました。
日本では江戸時代にあたる18世紀頃に、すでに江戸に麦茶を売る店が登場していたことが歴史的に確認されています。
ちなみに、当時は「麦茶」ではなく「麦湯」と呼ばれ、往来に屋台を出して売るスタイルが一般的だったようですね。
現在のように家庭で麦茶を作ることが一般的になったのは明治に入ってからのこと。
クーラーや冷蔵庫、氷でさえ簡単に手に入らなかった時代には、身体を冷やす飲み物としての麦茶は夏に欠かせない飲料だったのです。
麦茶の知られざる健康効果
麦茶には茶葉を煮出す時に、大麦が持つ栄養成分がたっぷりと染み出します。
大麦には先ほどご紹介した身体を冷やす効果以外にも、虫歯予防や血行促進、さらには発がん物質を抑制したりと驚くほどの健康効果があります。
人間の口内で虫歯を発生させる原因となるのは、ミュースタン菌と呼ばれるバクテリアの1種です。
ミュースタン菌は別名虫歯菌とも呼ばれ、歯磨きで取り除けなかった歯垢や食べかすをきっかけにして、歯に穴を開け虫歯を大きくしていく厄介な菌です。
しかし、麦茶を飲むとミュースタン菌の生成が抑えられ、虫歯の出来にくい口内環境を作ることが出来るのです。
この他にも、近年の研究では麦茶の中に存在するピラジンという成分が、流れの悪い血液をサラサラにしてくれる事も判明しました。
ピラジンは、原料の大麦の葉を焙煎しているときに生まれる麦茶特有の成分です。
夏は気温の影響で体温が高く麦茶を飲むことで身体を冷やす事ができますが、冬には熱いお湯で煮出した麦茶を飲むと、ピラジンの働きによって血流がグングンと流れていくため、次第に身体が温まり冷え性の改善が期待出来ます。
そして麦茶にはガン細胞を生み出す発がん性物質や、老化の原因となる活性酸素を除去する働きがあることも分かっており、日常的に麦茶を飲むことが健康維持に繋がることが実証されてきました。
子供の頃から何気なく飲んでいた麦茶には、実はこんなに凄い健康効果があったのですね。
これからは夏だけでなく、冬に「ホット麦茶」を飲む習慣が日本に根付く日も近いかもしれません。