近年ネット通販やドラッグストアなどで急速に市場を広げているヒット商品があります。それが「女性用の育毛剤」です。
これまで「育毛剤=男性向け商品」と考えられてきましたが、ここ数年で女性向けの育毛剤は相次いで新製品が開発され大ヒットを飛ばしている商品もあります。
また「脱毛症」の悩みで皮膚科を受診する女性の数も年々増加傾向にあり、脱毛が男性だけの悩みではないということが広く認知されつつあります。
今回は近年急増している女性の脱毛症について説明していきたいと思います。
女性に多い脱毛症
脱毛症の悩みで皮膚科を受診する患者の男女比は9対1で圧倒的に男性が多いのですが、女性患者も徐々に増えつつあります。
男性の場合、男性ホルモンが起因で起こる男性型脱毛症(AGA)の有病率は50代を境目に急増し、75歳以上の後期高齢者になると90%の人に起こるとされていますが、女性に最も多い脱毛症は「びまん性脱毛症」という病気になります。
この脱毛症は頭皮付近の「血流障害」によって引き起こされるもので、主な原因は
・加齢
・ストレス
・生活習慣病
などになります。
また、従来女性患者が確認されていなかった「男性型脱毛症」の症例も確認されるようになり、女性がかかる男性型脱毛症は「女性男性型脱毛症(FAGA)」と呼ばれています。
びまん性脱毛症について
女性の脱毛症のおよそ8割が「びまん性脱毛症」なので、今回はこの脱毛症に特化して説明していきたいと思います。
私たちの髪の毛には「ヘアサイクル」という”髪の毛が生え変わる周期”によって全体のボリュームと一定の本数が維持されています。つまり、健康な人でも髪の毛は常に生え変わり、抜け毛は日常的に起こっているのです。
ヘアサイクルにおける、髪の毛の一生は次のようになります。
・初期成長期:髪の毛が生え始める時期。古い髪の毛が抜ける時期(退行期)とリンクしています。
・後期成長期:新しい髪の毛がぐんぐん成長していく時期。この時期には毛根も急成長します。
・停滞期:髪の毛は完全に成長し、毛根の成長はストップします。
・退行期:毛根が小さくなり、寿命を迎えた髪の毛が抜けていきます。
この間平均二年間と言われています。(毛髪の平均寿命)
初期成長期と退行期がリンクすることで髪の毛のボリュームや本数が維持されているということになります。
「びまん性脱毛症」では頭皮付近の毛細血管に起こる血流障害や皮膚トラブルによってこのヘアサイクルに狂いが生じ、生えてくる髪の毛よりも抜けていく髪の毛の方が多くなります。
また、せっかく生えてきた髪の毛も栄養失調状態で細くコシがなく抜けやすくなっているのです。
そのため、この脱毛症を発症すると、頭頂部から次第に薄くなり始め、やがて頭部全体の髪の毛のボリューム感や本数が少なくなってしまいます。
毛髪の一部が全く生えなくなってしまうAGA(FAGA)とはこの点が異なります。
毛根(毛乳頭細胞)も皮膚細胞の一部で、毛細血管から栄養をもらって代謝活動を行っているため、「血流障害」や「頭皮トラブル(主に炎症を引き起こす脂漏性皮膚炎や乾燥)」が発生すると毛根自体が栄養失調状態になるか、完全に機能不全状態となり、ヘアサイクルに狂いが生じてくるのです。
血流障害や頭皮トラブルを起こす原因の大半は
・加齢
・ストレス
・誤ったヘアケア
になりますので、皮膚科医の指導のもと適切なストレスケアとヘアケアに留意することと、生活習慣を改めアンチエイジングに努めることが唯一の「びまん性脱毛症対策」になります。
自分の肌質にあったヘアケア製品を選ぶためにも抜け毛が目立つようになったと感じたらまずは皮膚科に相談するようにしてください。