人が生きていく上で欠かせない物質の一つに「ホルモン」があります。
ところがこの「ホルモン」という言葉はニュアンスを変えていろいろなところでいろいろな使われ方をしています。
その中でもっとも誤解を生じやすいのが、食べ物の「ホルモン」ですね。この場合は「内臓」を意味しています。
内臓の事を「ホルモン」と呼ぶようになった謂(いわ)れには、すぐに鮮度が落ちてしまいとても食べられるものではなくなるため、「ほおるもん(関西弁で「捨てるもの」という意味)」が変化して、「ホルモン」と呼ぶようになったという説が有力視されています。
もちろんこれはこれからお話しする「ホルモン」とは全く無関係です。
ここで紹介する「性ホルモン」は私たちの健康にとても重要な役割を果たしている物質ですので、ぜひこの機会に「性ホルモン」についての理解を深めていただければと思います。
ホルモンについて
「ホルモン」は特定の臓器で微量に作られる特殊な働きを持つ化学物質です。各々のホルモンは特定の器官、特定の細胞にしか作用しないという特徴があります。
ホルモンの働きとは酵素を合成し、その酵素を特定の細胞に反応させる事で”代謝を促す”というものです。
ホルモンはその働きと作られる場所によって
・性ホルモン
・成長ホルモン
・代謝ホルモン
・副腎皮質ホルモン などに分類されています。
ホルモンのバランスが乱れると、「代謝活動」に悪影響を及ぼし、様々な健康被害をもたらします。
特に「性ホルモンのバランスの乱れ」は情緒や精神に大きく悪影響を及ぼします。
人は人生に最低でも二回(女性の場合は三回)性ホルモンのバランスが乱れる時期があると言われています。それが
・思春期
・更年期
・(女性の場合)妊娠 です。
ホルモンバランスが乱れる事でもっとも顕著に見られるのが「情緒不安」と「不定愁訴(イライラして怒りっぽくなる)」であることからも、「性ホルモン」が情緒や精神状態と深く関連性があることがわかりますね。
具体的には思春期に見られる反抗期や妊娠中のマタニティブルー、更年期障害の諸症状も、性ホルモンバランスの乱れによるものです。
また、「うつ病」や「総合失調症」「不眠症」などの精神疾患も「性ホルモンバランスの乱れ」が原因の一つに挙げられています。
性ホルモンの働き
性ホルモンとはその名の通り、「性」に関するホルモンで
・生殖器関連(性器の発育や精子、卵胞の形成など)
・発情
・妊娠
・毛髪や体毛を増やす
などに影響を与える物質の総称で、卵巣や精巣で作られます。
ただし、男性でも女性ホルモンが、女性でも男性ホルモンが分泌されていることからも分かるように、生殖組織以外からも分泌されていて、その組織は「副腎皮質」であることがわかってます。(副腎皮質から分泌されるホルモンは「ステロイド」と呼ばれているので、性ホルモンもステロイドの一種になります)
また、性ホルモンは上記以外にも「自律神経」と深く関与していることが判明している重要なホルモンです。「自律神経」とは
・内臓を動かす
・呼吸をする
・体温をコントロールする
など生きていく上で非常に重要な役割を果たす神経で、さらに「交感神経」と「副交感神経」とに分ける事ができます。
「交感神経」は日中の活動中に活性化する神経で、男性ホルモンが優位に作用し、外的なストレスや危険から身を守ったり、「やる気」や「活力」を起こさせるアクティブな神経と言われています。
一方の「副交感神経」は夜中から入眠中に活性化する神経で、女性ホルモンが優位に作用し、日中に受けた心身の傷やストレスを癒してくれる神経で、リラクゼーションをもたらす神経と言われています。
性ホルモンのバランスが崩れると自律神経をコントロールする視床下部にも乱れが生じ、本来なら入眠中であるはずの時間に「交感神経」が異常興奮を起こす事で「不眠症」になり、精神的なバランスが崩壊したり代謝サイクルにも異常を来すようになり様々な健康被害を引きおこします。
一方で「副交感神経」が長時間活性化してしまうと、無気力状態や刺激に対する反応が鈍くなる、集中力や記憶力が低下するなどの悪影響が出ます。
ストレス社会と呼ばれている現代では、ストレスによる性ホルモンバランスの乱れが問題視されています。
ストレスは「男性ホルモン」を活性化させ、交感神経を刺激します。寝ているはずなのに疲れが取れない、朝起きた時にやる気が起きない、眠れない、性欲が落ちてきた、などに心当たりのある人は体内の性ホルモンのバランスが乱れている可能性があります。
ホルモンバランスは生活習慣を見直すことで改善されていきますので、気になる人は一度お医者さんに相談してみると良いでしょう。