日頃から美肌や美容に気を使っている人なら「活性酸素」の作用についての知識はお持ちだと思います。

しかし、活性酸素を不当に悪者扱いしていませんか?

確かに作られすぎた活性酸素は健康な細胞まで攻撃してしまう乱暴者です。しかし、活性酸素を除去しすぎるというのもまた考えものなのです。

今回は一般的にはネガティブなイメージを抱かれがちな「活性酸素」の本当の姿について紹介します。

活性酸素と関係のある免疫系について

活性酸素と関係のある免疫系について

「活性酸素の真の姿」について知るにはまず「免疫系」の働きについて知る必要性があります。

「免疫系」とは私たちに自然と備わっている「自己防衛力」のことで、白血球やキラー細胞のような免疫細胞以外にも様々な器官が相互的に作用することで機能しています。

私たちの健康や美容にとって最も脅威なのは「ウィルスや雑菌・紫外線」など外的なストレスと、「がん細胞や老廃物」のように体内で作られる異物です。

外的なストレスに対抗するための最前線で働くのが「皮膚」と「粘膜組織」です。

健康な皮膚が弱酸性なのはよく知られていることですが、これは「ウィルスや雑菌を異常繁殖させない」ためのバリアの役割があります。そして皮脂は乾燥から皮膚表面を保護してくれているのでこれも「免疫系」になります。

 

また、人間の免疫力全体の約6割は「腸」に依存していると言われています。

「腸」といえば「小腸」は栄養分の吸収、「大腸」は便の排泄という大切な役割のある臓器ですが、直腸を通じて外部と接触しているため、腸内は全域を粘膜に覆われ、外部から侵入してくるウィルスや雑菌を吸着し、善玉菌の働きや排便で侵入を阻止しているのです。

 

一方で、体内で働く「免疫系」としてはいわゆる「免疫細胞」の働きがよく知られていますね。

よく言われるのが白血球などのマクロファージと呼ばれる免疫細胞が、異物を検知したらそれらを取り込み無害化させるという第一次攻撃を仕掛け、その第一次攻撃をかいくぐった異物に対してキラー細胞という特殊チームが抗体という武器を使って、異物を排除するという働きです。

特にがん細胞に対しては「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」が常に哨戒して、がん細胞を見つけ次第攻撃するという仕組みになっています。

ここまでは皆さんよくご存知の免疫系の働きですが、実は体内に侵入してきた異物を白血球よりも先に検知し、最初の一撃を加えるのが活性酸素なのです。

関連:活性酸素が発生する原因って?活性酸素を除去する食品、運動や生活習慣とは

 

活性酸素ができるプロセスとその働き

活性酸素ができるプロセスとその働き

活性酸素は動物だけでなく植物でも合成される物質です。その生成プロセスは次の通りです。

・呼吸をして酸素を取り込む

・代謝反応の過程で酸素分子が多分子化し、活性酸素が作られる

つまり、呼吸をすれば自然と作られるのが活性酸素という物質なんですね。

 

活性酸素自体は非常に不安定な物質です。不安定なのですぐに他の物質と結びついてしまうという性質を持っています。

実はこの「不安定ですぐ他の物質と結びつく」という性質がとても重要で、体内に侵入してきた異物にすぐに取り付いて無害化させてしまうのです。

ところが攻撃の対象を侵入してきた異物、もしくはがん細胞などの異物と認識するという能力はもっておらず、とりあえず近くにいる物質に作用するため、出来すぎてしまった活性酸素は健康な細胞まで攻撃し始めてしまうわけです。

 

活性酸素は「ストレスを感じて」(植物の場合はストレスを検知して)酸素を大量に取り込むことで、その分たくさん作られることになり、余剰が生じてしまいます。

これをフローで表現すると、ストレスを感じる→酸素をたくさん取り込む→たくさん取り込んだ酸素の分だけたくさんの活性酸素が作られてしまう→余剰分の活性酸素が健康な細胞を攻撃するという仕組みになっています。

 

肌荒れやシミ、そばかす、小じわなどが目立つ場合、あるいは中年期以降の代謝が落ちる年齢になると活性酸素対策は非常に重要ですが、目立つような肌トラブルのない人や代謝の盛んな若いうちから積極的に活性酸素対策をしすぎると、かえって免疫力を低下させてしまうことにもなりかねません。

何事も程々に行うということが重要なので注意してください。