人前に立つことが恥ずかしい、目立つのが苦手、そんなコンプレックスを抱えている場合、それは単なる性格の問題ではなく「社交不安症(SAD)」という病気かもしれません。
パニック障害などと同じ不安障害の1つである「社交不安症」は、社会的な場面に立たされると、言いようのない不安を感じたり、恐怖を感じてしまうといった症状が現れるのが特徴で、社会に出て間もない若い世代に発症することが多い疾患とも言われています。
昔は「あがり症」と言われていた社交不安症
昔は、人前に出るのが苦手な人をあがり症、もしくは緊張症と呼んでいました。
このような症状を一括りにして社交不安症と呼ぶようになったのは2008年からで、それ以前は欧米で使われていた病名をそのまま直訳した社会不安症という名称が使われていたため、今でもしばしば混同する人も多く存在しています。
社交不安症を発症する原因については今でも明らかになっていませんが、現在最も有力なのは、社会性のある場に立つと、脳内から分泌される神経伝達物質のセロトニンの量が減ることが原因だとする説です。
精神を安定させる働きをもつセロトニンが減少すると、ささいなことで不安を感じやすく、それが身体にも悪影響を及ぼすと言われているため、セロトニンと社交不安症は密接に関わっていると考えられているのです。
症状によって見分ける全般型と非全般型
社交不安症は、症状によって「全般性」「非全般性」の2つに分けることが出来ます。
社交的な場に出ることで症状が出るときは全般性、そして人前に出てスピーチをする、あるいは、手が震えて物を書く事が出来ない、といった特定の行為を行なうときにだけ症状が現れるのが非全般型です。
全般性と非全般性に大きな症状の違いはなく、いずれも大量の手汗や動悸が起こったり、さらに重症化すると過呼吸を引き起こし、人命にかかわる事態になることも珍しくありません。
社交性不安症の治療法
現在、社交不安症の治療法で多く用いられているのは、薬物治療と精神治療です。
薬物治療では、SSRIと呼ばれる物質を使い、社交不安症の原因と考えられているセロトニンを正常なバランスに整え、症状の改善を目指します。
また、精神治療では、患者本人が不安を感じる原因についての自己分析を行い、少しずつ行動を伴いながら改善を目指す認知行動療法が用いられています。
どちらの治療法も、必ず病院で専門の医師の下で行うことが必要となってくるので、社交不安症を発症した場合は、速やかに病院を受診するこが大切です。
社交不安症は、原因が自分の性格によるものだと決めつけ、症状が重症化するまで病院を受診せずにいる方も多い疾患です。
もしも社交不安症の疑いがあるときは、一人で我慢せずに家族や信頼できる知人に相談するか、厚生労働相が設置しているホットラインを利用するようにしましょう。