厚生労働省が行った「2013年国民健康・栄養調査」によれば、糖尿病の有病率(その病気が強く疑われる人の割合)は男性が16.2%、女性が9.2%であり、50代から急増することが判明しています。
全人口に対する有病率が10%を越えると「国民病」と呼ばれるようになることから、糖尿病は看過できない重要な病気であることが分かります。
今回は「30代から気をつけたい糖尿病について」というテーマで「糖尿病」について詳しく紹介したいと思います。
30代でも糖尿病になるの?
最初に述べたように糖尿病の有病率は50代以降に急増します。
ではどうして今回のテーマを「30代から気をつけたい糖尿病について」にしたかといえば、それは「糖尿病の90%以上が生活習慣病としての糖尿病」だからです。
つまり、若い頃の不摂生の積み重ねのツケが50代以降になって「糖尿病」という形で現れてくる可能性が高く、代謝の落ち込む30代頃の生活習慣がその後の生活習慣病への罹患リスクを大きく左右するからです。
また、日本人は欧米人に比べて痩せている人でも糖尿病にかかりやすいと言われていて、重大な合併症を引き起こすリスクも高いので、痩せている太っている関係なく糖尿病には注意しなくてはいけません。
糖尿病の名前の由来
糖尿病は「血糖値」が恒常的に高い場合に診断される生活習慣病です。
したがって診断の決め手は末梢血を採取して得られる血糖値関連のデータということになるのですが、病名は「血糖病」ではなく「糖尿病」ですよね。これはなぜなのでしょうか?
実は糖尿病自体は江戸時代からすでに存在が確認されていた病気で、「尿が濁り、舐めると甘い」と定義されていたことに由来しています。
ただし、「尿に糖質が混ざっている状態」というのはかなり進行した後期の糖尿病で、現代の血糖値から判断される糖尿病の場合は、尿に味や見た目に変化を及ぼすほどの糖質が検出されることはまずありません(ごく微量の糖質は確認されます)。
なぜなら、ブドウ糖は代謝や脳の活動のエネルギー源として消費され、余剰分は内臓脂肪や皮下脂肪として再合成された状態で蓄えられていくからです。
したがって、糖質のまま尿に混じって排泄されるということが通常ではありえないのです。
糖尿病発症のメカニズム
血糖値が常に高いということは、ブドウ糖がエネルギー源として消費されていないということを意味しています。
更にエネルギー源として消費されていないということは、内臓の代謝活動や脳の活動が「慢性的なガス欠状態」を引き起こしていることになり、いろいろな健康被害をもたらします。
糖尿病自体にはほとんど自覚症状はありません。したがって油断していると静かに進行し、50代以降になって急に牙を剥き、場合によっては命に関わるような深刻な合併症を引き起こすのです。
ブドウ糖は膵臓から分泌される「インスリン」と呼ばれる代謝ホルモンによって全身の細胞に供給されていきます。
このことから糖尿病は「膵臓の機能不全による、インスリン代謝異常」であるということが分かります。
インスリンが全く分泌されないかそれに近い状態の重度の糖尿病では、「インスリン自己注射」によって体内のブドウ糖濃度をコントロールすることで、全身のガス欠状態を回避する必要があるのです。
糖尿病の三大合併症
糖尿病は非常に高確率で様々な合併症を引き起こすことが知られている病気ですが、中でも「三大合併症」と呼ばれるものがあるので見ていきましょう。
糖尿病性網膜症
血糖値の上昇により血液の粘度が上がり、血栓ができやすくなることで網膜を通る血管が脆くなり網膜症が発症します。
視力の低下が顕著になり、場合によっては失明する場合もあります。糖尿病性網膜症は日本人の失明原因第1位にあげられています。
糖尿病性神経障害
糖尿病性網膜症と同様に、血糖値の恒常的な上昇で血管が脆くなり、神経伝達物質(シナプス)のやりとりが円滑に行われなくなったり、末梢神経が傷つけられ痺れや麻痺、自律神経失調症、神経痛などの症状をきたすようになります。
糖尿病性神経障害は、糖尿病の合併症の中でも一番高頻度で起こる合併症とされています。
糖尿病性腎障害(じんしょうがい)
血糖値が高まることで血管が集中している腎臓に過度の負担がかかり、腎機能障害を引き起こす合併症です。
症状が進行すると慢性腎不全となり人工透析が必要になります。
これ以外にも糖尿病には、「高血圧症」「動脈硬化症」「膵臓がん」「多臓器不全」「認知症」「虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)」「四肢の壊疽」「動・静脈瘤」などの合併症例が多く確認されています。
糖尿病は遺伝する?
親が糖尿病なら子どもや孫に遺伝するという話を耳にしますが、遺伝が原因で発症する糖尿病は「I型糖尿病」と呼ばれるもので、これは糖尿病全体の2%以下の有病率になります。
それ以外は全て生活習慣の乱れが原因で起こる「II型糖尿病」で、親がこのタイプの糖尿病の場合、子供が成人してから糖尿病を発症したとすれば、それは親の生活習慣に問題があるということになります。
代謝が盛んな20代までは多少生活習慣が乱れていても取り返しはつきますが、30代以降は徐々に代謝が落ちていきます。
30代であれば、糖尿病になるのを避けるための生活習慣を改善する最大かつ、最終的なチャンスであると言えるでしょう。
食生活の乱れや運動不足、睡眠不足などに心当たりのある人は是非生活習慣を見直してみてください。