日本人全体で「慢性的な頭痛」の悩みを持っている人はおよそ3,000万人に上ると言われています。日本人のおよそ4人に1人が頭痛持ちという計算になりますね。

ところであなたは「頭痛」という言葉からどんな種類の頭痛を連想するでしょうか?

「偏頭痛」が最も多いのではないかと思われますが、実は「慢性頭痛」のタイプとして最も多いのは「緊張型頭痛」と呼ばれるもので、「偏頭痛」の倍以上の患者数がいると言われています。

そして、この二大慢性頭痛は発作のメカニズムがまるで違うのです。それにも関わらず多くの人は頭痛と言えば「偏頭痛」を連想します。

今回はこうした知っているようで知られていない「偏頭痛」について紹介します。

偏頭痛持ちの人はかなり多い

偏頭痛持ちの人はかなり多い

「偏頭痛」の患者数はおよそ840万人で、男性よりも女性に多い慢性頭痛として知られています。

では、どうして緊張型頭痛よりも偏頭痛の方が認知度が高いのかと言えば、これは一種の印象操作からきているものと思われます。

テレビCMや頭痛薬のポスターで、男性が頭痛の発作で痛がっている姿を見かけたことはありますか?ほぼ100%女性が発作で痛がっている姿が映し出されています。

また、偏頭痛は痛みが強いので痛み止めが手放せません。それゆえに女性に多い偏頭痛が慢性頭痛の代名詞的な位置づけになったのだと考えられます。

 

偏頭痛は「片頭痛」と記載される場合もよく見られますが、これは発作が左右どちらかに起こることが多いからで、以前は「片頭痛」と表記する方が一般的でした。

ところが、左右両方に発作が起こる症例もあるため今では『偏頭痛』の方が病名としては一般的となっています。

偏頭痛は30代女性の場合、5人に1人ぐらいの割合で発症するとされています。

 

偏頭痛は不治の病?

偏頭痛は不治の病?

患者数が国民全体の1割を超えるような場合は「国民病」と呼ばれる病気になります。

偏頭痛の患者数は軽くこの割合を超えているので、れっきとした「国民病」と言っても過言ではないのですが、この頭痛は未だに謎が多く、根治するための治療法が確立されていない厄介な病気なのです。

したがって、治療方法は安静と痛み止めによる「対症療法」しか存在せず、一度発症すると長期間に渡って発作に苦しむ病気になります。

 

偏頭痛の発作が起きるメカニズム

偏頭痛の発作が起きるメカニズム

しかし、それなりの研究成果も上がっていて、発作が起こるメカニズムについては解明されつつあります。

そこでここでは偏頭痛の発作が起こるメカニズムに迫ってみましょう。

 

偏頭痛発作の特徴

・心臓の鼓動に合わせて痛みが走る「拍動性頭痛」

・動き回ると痛みが強くなり、安静にしていると治る

・発作の継続時間は数分から数時間

・前兆症状や予兆症状と呼ばれる特徴的な症状を覚えることが多い

 

このうち一つ目と二つ目の特徴に着目してみましょう。

「心臓の鼓動」と「動き回ると痛みが強まる」という重要なフレーズが出てきました。

このことから「血液の流れ」と「偏頭痛発作」との因果関係が浮かび上がってきます。

 

もう少し詳しく言うと、「心臓の鼓動に合わせてズキズキとした痛みが走る」という点と「動き回ることで血流量が増えると痛みが強まる」ということは、血管が拡張するタイミングで血管周囲の知覚神経を過剰に刺激して発作が起こる、ということを意味しています。

また、安静にしていれば短時間で発作が治ることと、前兆や予兆といった特徴的な症状があることから、「発作がくる」という前触れを感じた時には、早めに痛み止めを飲んで安静にしておけば、かなり高い確率で発作を予防または軽減することが可能であり、これ以上に効果的な偏頭痛対策は今のところ存在しないということになります。

 

偏頭痛の予兆と前兆とは?

偏頭痛の予兆と前兆とは?

では、ここからは偏頭痛の「予兆」と「前兆」という症状についてお話しします。

これらは偏頭痛持ちの方全員に現れる症状ではありませんが、これらの特徴を知っておけば有効な偏頭痛対策になります。

 

偏頭痛の予兆について

偏頭痛の予兆は発作が起こる1〜2日前に起こります。

具体的な症状としては「イライラする(短気になる)」「情緒不安になる」「あくびが出る」「空腹感が強まる」「気分が落ち込む」などが挙げられます。

予兆は全ての方に現れるわけではなく、偏頭痛患者全体の20%程度の人に現れるとされています。

 

偏頭痛の前兆について

偏頭痛の前兆は偏頭痛発作が起こる1時間〜30分前程度で起こるケースが多く、発作直前になると消失します。

症状としては予兆の諸症状に加え、「視野の欠損(視界の一部が見えない状態)」「光に対して敏感になる」「突然ギザギザした光が見える閃輝暗転(せんきあんてん)が起こる」「首や肩のこりが強まる」などがあります。(前兆が起こらないケースもあります)

 

偏頭痛は進行性の慢性疾患です。したがって放置していては症状が強くなったり、次の発作までの間隔が短くなるなど悪化させてしまうリスクがあるので、放置せずに必ず病院で適切な治療を受けるようにしましょう。

また、すでに偏頭痛持ちの人は前兆で見られるように「光に対して敏感」になるので、日差しが強まる夏場や日差しの乱反射が強いオフィス街、海やプール、川などの水辺、雪による照り返しなどにはサングラスをするなどの対策をとるようにしてください。